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「ブラジル人K-POPファン、韓国で売春を強要される」――。

 こんな見出しの記事がブラジルの大手全国紙「オ・グローボ(O Globo)」(web版)に掲載されたのは、9月4日(現地時間)のことだ。韓国の通信社「聯合ニュース」も同日、事件に対するブラジルメディアの反応を紹介しつつ、「ブラジルで積み上げてきた韓流のイメージに悪影響が及ぶことが憂慮される」と危機感を伝えた。

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「韓国に来ればタレントにしてやる」

 犯行の経緯はこうだ。今年7月初め、ブラジルに住むK-POPファンの女性らがSNSを通じて40代の韓国人男と知り合った。男は言葉巧みに、「韓国に来ればタレントやモデルとして活動できるようにしてやる」と勧誘。さらに韓国とブラジルの往復航空券まで、無償で送ってきた。女性らは熱心な男の言葉に乗り、韓国行きを決意。こうして翌8月8日、20~30代のブラジル人女性7人が韓国の空港に降り立つ。

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男の態度が豹変したのは、女性らが入国してすぐのことだ。男は女性らをソウル市近郊・坡州市の一室に連れて行き、パスポートを取り上げた。さらにブラジルへ帰る航空券もキャンセルしてしまい、監禁状態に。続いて別の一団が現れ、数日にわたり女性らが逃げないよう監視を続けた。

 女性らが次に連れて行かれたのは、隣町・一山の違法マッサージ店。マッサージと称して売春を斡旋する業者に、売り飛ばされたのだ。金額は、1人あたり200万ウォン(約18万円)。男らは「自分たちは韓国のマフィアだ」「警察に通報したらお前たちも売春の共犯で処罰される」「売春を拒否したら入国時の飛行機代を払わせる」などと脅し、大人しく従わせようとしたという。





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こうして女性らは、しばらく売春を強要される日々が続いた。だが8月17日になり、監視の目が緩んだ隙を見て韓国のブラジル大使館に連絡。大使館の通報で韓国警察は一山の違法マッサージ店、また坡州市の一室から、計7人全員を救出した。犯人の40代男ら計5人は、特殊監禁、人身売買、売春斡旋などの容疑で逮捕されている。

BTSはブラジルで10万人動員

ブラジルは、早くからK-POP人気が根づいた国の1つだ。すでに00年代初頭から韓流ドラマが浸透し始めていたが、K-POPの現地プロモーションが本格化したのは2011年から。ちょうど日本でも第一次K-POPブームに沸いていた時期だ。すでにK-POPにハマっていた日系ブラジル人の若者も、その媒介役を果たしたといわれている。

 さらに翌2012年にPSYの「江南スタイル」が世界的に大ブレイクすると、ブラジルでもK-POPの認知度が一気に高まった。現在では若者層を中心に音楽、パフォーマンスからファッション、メイクアップまで、影響力を振るっている。BTSこと防弾少年団が今年5月に行ったサンパウロのスタジアムでの公演は、10万人のファンを動員した。

 だがこうした海外のK-POP人気も、売春業者たちにとっては新しいメシの種にすぎなかったようだ。

 韓国ではかねてから、外国人女性の売春が社会問題化してきた経緯がある。2018年に売春で摘発された外国人は、前年の954人より24%多い1182人だ。

 なかには今回の事件のように、望まない売春を強要されるケースも少なくない。最近では2017年7月、釜山市でタイ人女性が救出された事件が話題を呼んだ。この女性は同年3月、マッサージ店に勤務する約束で訪韓。だがやはりパスポートを奪われて雑居ビルの一室に監禁され、売春を強要されていた。救出のきっかけは、覚えたてのハングルでSOSメッセージを書いた紙きれだ。監視つきで買い物に出た際こっそり店員に手渡し、警察の捜索につながった。

 2018年9月にはさらに、タイ人女性約300人を韓国に呼び寄せて売春をさせていたブローカーら24人が捕まる事件も起きている。ブローカーらは、韓国のマッサージ店で働けば儲かるなどと説明して女性らを観光ビザで入国させていたという。パスポートを取り上げて行動を監視するなど、こちらの事件もブラジル人のケースと手口はよく似ている。

 そのほかカザフスタンでスカウトした女性に虚偽の難民申請をさせて風俗店で働かせる、偽装結婚で入国させたベトナム人女性に売春をさせるなど、手法も多様化してきた。

 世界で高まるK-POP人気を悪用した犯行には、日本も警戒したほうがいいのかも知れない。

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(出典 matome.naver.jp)