20190915-00013984-bunshun-000-2-view「一緒にコンビニに入った際、領収書の書き方で店員とトラブルになり、彼は怒って喚き散らし始めた。すでに店長に警察を呼ばれているのに、私に『110番しろ!』と。パトカーが到着して別々に話を聞かれることになったのですが、そこで彼は『由美子! 手を繋げっ!』と叫んだんです」

そう語るのは、常磐道でのあおり運転と暴行で逮捕された宮崎文夫容疑者(43)と恐怖の4日間を過ごした、岐阜市在住の由美子さん(40代・仮名)である。

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 宮崎は8月18日、大阪で確保された際、そばにいた交際相手の喜本奈津子容疑者(51)に「喜本、手繋いで。喜本さん!」と叫んだ。その様子をテレビで見た由美子さんは、昨年9月に味わった悪夢が甦ったという。

 由美子さんが、宮崎と過ごした4日間を告白する。

マッチングした日に奈良から岐阜へ飛んできた

「9月の日曜日の午後、出会い系サイトでマッチングした途端に、『夜ご飯どうですか』とメールが来たんです。向こうは『今、奈良にいます』というので『無理でしょう』と返すと『いやいや、向かいます』と」

 岐阜駅近くの喫茶店で午後5時に待ち合わせた2人。1時間ほど遅れて現れた宮崎は、黒いジャケットに紺のYシャツ姿で、サングラスとマスクをしていた。

「会った途端、矢継ぎ早に『不動産をやってるんだ』と喋り出し、名刺を渡された。『岐阜ならではのものが食べたい』というので飛騨牛のお店に行きました」

 すると宮崎は女性の店員にも「奈良から飛んできたんです」と名刺を渡し、「自分はこういう者です」と喋り出す。食事後、「帰る」と言う由美子さんに対し、宮崎は「せっかく岐阜に来たんだから案内して欲しい」とせがみ、黒のランドクルーザーに乗せられた。

 ここから4日間にわたる“監禁”生活が始まった。

宮崎のアパートで一睡もできないまま過ごした1日目の晩

 1時間ほど市内を回った後、車は突然、名古屋方面に。「ちょっと、こっち名古屋じゃん」と由美子さんが驚くと、「西区にアパートを借りたばかりで、プリンターとファックスを繋ぐので手伝ってくれ」と宮崎。

 連れられた4階の1LDKの部屋には新品のソファとテーブル、布団のみ。そこで宮崎は途中のコンビニで買った酒を飲み出した。

「ちょっと、(車で)帰れないじゃん!」

「わかった、アルコールが抜けるまで待ってくれ」

 宮崎はそう言うと、由美子さんに抱きつき、そのまますぐに寝てしまう。

「夜中なのに大音量で洋楽をかけっぱなしで、一睡もできないまま朝になった。この時点で『ヤバイな。言うことを聞いたほうがいいのかな』と思い始めました」

「いつ刺されてもいいように」着込んだジャケットは塩が吹いていた

 翌日、車に乗り込むと、宮崎は「俺の秘書になって」と、携帯のアプリを使い、勝手に由美子さんの名刺を作り出した。その後、車は名神高速道路を走り出す。

「どこ行くの?」「大阪や」

 車間距離を詰めてパッシングを繰り返し、前に出ると小刻みに曲がったりブレーキをかけたりする宮崎。常時140キロのスピードを出しながら、時折ウトウトも。電気グルーヴの曲が大音量で流される車内で、彼のジャケットは汗で塩が吹いていた。

「なんで着込んでるの?」

「商売関係の人に妬まれたり警察に狙われているから、いつ刺されてもいいように」

 夕方に大阪に到着。由美子さんが「もう帰りたい。最寄りの駅に送って」と告げると、宮崎は「そんなもん、帰さへん!」と激高。

「私がボロボロと涙を流すと、宮崎はニヤニヤ笑って『ごめん、ごめん。俺が悪かった』と。その後、うどん屋に寄ると、彼はぜんざいを平らげた後、うどんと揚げ物を食べていました」

 大阪の自宅マンションに着くと、今度は由美子さんに三重への同行を要求。現地で頼まれた用事を済ませると、その日は車中泊した。

領収書の「株式会社」を略しただけで激高

 翌日は大阪のオフィスに向かい、銀行員との打ち合わせに同席させられる。

 終わると「BMWの故障を直したい」と郊外の店舗に向かった。「秘書っていうことにするから、傍(そば)についていろ」と命令し、由美子さんが車を見ていると「傍にいろっ!」。そして店員に「前の秘書は車を擦ったからクビにした。新しい秘書や」。

 店を出た後、今度は近くのパスタ屋へ……。

「宮崎は接客した学生風のバイトの子に『会計時に、これで領収書を切って』と名刺を渡しました。ところが領収書は用意されておらず、凄く怒り出した。『店長出せ!』『会社に謝罪の文面を出させろ』と1時間ぐらいゴネ続けたんです」

 その後に寄ったコンビニで、冒頭の騒動を起こす。

「領収書の宛名に『“株式会社”と書いて』と言うと、店員が(株)と略してしまった。そこでまた怒り出し、店長が警察を呼びました」

 駆けつけた警官に、店長は「大声を出すから営業妨害だ」と訴え、宮崎は「店を出ようとして足を踏まれた」などと主張。結局、暴行はないということで、警察は引き上げた。

母親に婚約者として紹介

 4日目の朝、宮崎は由美子さんを母親が入居する大阪の介護施設に連れて行く。そこで突然、「俺の婚約者だ」と母親に紹介した。

「高齢のお母さんに色々話しかけるのですが、ほとんど反応はなかったです。宮崎は、お母さんの成年後見人の弁護士にも電話していた。所有する不動産の賃料収入のことで揉めている様子で、『あんな奴、クビにしてやる』と怒っていた」

 宮崎家の財産分与の相談に乗っていた顧問弁護士は、小誌の取材にこう答えた。

「確かに母親には成年後見人の弁護士が付いていました。先代から相続した不動産の賃料収入を、本来は母親が2分の1、宮崎さんと姉が4分の1ずつ分けなければならないのに、それを宮崎さんが独り占めしてトラブルになっていたのです」

「後ろめたさで警察には…」

 ようやく岐阜に向かった宮崎は、由美子さんを自宅で解放。4日の間、2人に性的関係はなかったという。

「すぐに連絡先はブロックしました。警察に行くことも考えましたが、出会い系サイトで会った後ろめたさもあり、自己責任かと思って踏み切れなかった。暫く体調も崩しました」

 そして今年2月、宮崎は同じく出会い系サイトで喜本と出会う。同月深夜、2人は渋谷に出現。目撃した50代の男性が語る。

「路肩に車を停めていると、サングラスを掛けた男性が、携帯でこちらを撮影する女性と歩み寄ってきて、『前のパーキングに停めた車を出せないから、どけて貰えませんか』と大声で言ってきた。バックさせようとすると、今度は女性がすぐ後ろに回り込んで退かない。当たり屋かと思って警察を呼び、こちらも彼らをスマホで撮影しました。今回のニュースを見て、『あの2人だ!』と驚きました」

なぜ宮崎は野放しになっていたのか

 喜本の友人が明かす。

「彼女は『今度できた彼氏が高収入で外車に乗っていて』と嬉しそうだった。『留置場に入ったことがある』とも言っていたので少し心配していました。彼女は私の知る限り、30代まで男性ときちんとした交際をしたことがなかったはず」

 だがなぜ、宮崎のような人物が野放しになっていたのか。捜査関係者が語る。

「宮崎は地元の大阪でも警察が駆けつけるレベルの揉め事は複数あるが、多くが“トラブル”で済んでいた。昨年に起こしたタクシー運転手の監禁事件も起訴猶予で終わっている。起訴に至らなければ前科にならず、見過ごされてきた面がある」

 今回の事件で宮崎にどのような処分が下るか、捜査の行方が注目される。