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安倍政権の日韓対立扇動に乗せられて、マスコミは他の問題なんてどうでもいいとばかりに連日、大報道を繰り広げている。先日も隣国の法相候補に過ぎない曺国氏の聴聞会に中継カメラまで出し、「タマネギ男は何を語るのか」などとヒートアップしていた。

だが、国民やメディアが嫌韓に踊らされている裏で、安倍政権が消費増税に続き、国民の生活に打撃を与えるとんでもない計画を進めていることをご存知だろうか。

それは、来年の介護保険法の改定での「要介護者切り捨て」だ。

安倍首相は11日に内閣改造をおこなうが、その後、社会保障改革の会議を開催する予定で、そこで年金制度とともに、介護保険制度も見直しの議論がされるのだという。

だが、問題はその中身だ。8月29日に厚労省の社会保障審議会介護保険部会が開かれ、すでに議論がスタートしているのだが、そこで検討すべき項目として提示されたのは以下のようなものだった。

〈介護サービス利用時の自己負担(原則1割)について、2、3割負担の対象者を拡大〉
〈在宅サービスの利用計画(ケアプラン)作成費に自己負担を導入〉〈要介護1、2の人への生活援助サービスを、市区町村による「地域支援事業」に移行〉(朝日新聞8月30日付)

安倍首相は消費税率の10%引き上げについて「社会保障の充実のため」と強調してきたが、これは完全に社会保障カット、弱者切り捨てではないか。

そもそも、安倍政権は2017年の介護保険法改正によって、2018年8月から年収が一人暮らしで344万円以上、夫婦世帯で463万円以上ある高齢者がサービスを利用した際の自己負担率を2割から3割に引き上げたばかり。にもかかわらず、2・3割負担の対象者をさらに拡大しようと言うのである。

しかも、この改悪案は、介護が必要な人、そして介護する人にとって、命の問題にもかかわるほどの大きな打撃を与えることはあきらかだ。

とくに注目したいのは、要介護1・2の生活援助サービス(訪問介護における家事などの身の回りのケア)を、現在の介護保険給付から市区町村の裁量でおこなう「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)に移行させようという項目だ。

一読しただけではわかりにくいが、これ、要介護1・2の人への生活援助を保険給付の対象から外そうという話なのだ。

「総合事業に移行」というが、もともと介護保険を適用する介護サービスとは別に、市町村がボランティアや地域住民の協力を得て独自に介護予防をおこなうなど、地域の支えあいを推進する制度。ところが、安倍政権になって、この制度を介護保険切り捨ての受け皿に利用し始めたのだ。

すでに政府は介護保険制度を一部改正し2015年から、要介護より軽度な要支援1・2の人の「訪問介護」と「通所介護」のサービスを保険給付から外し、この総合事業に移行させている。

しかし、この総合事業は前述したように、ボランティアなどが中心の支え合いの制度がもとになっているため、結果は受けるべき満足なサービスが受けられないという状況をつくり出しただけだった。実際、要支援者からは〈デイサービスなどでリハビリをすることで、重度化を防ぐサービスを受けられていたのに、地域のボランティアなどが担う体操教室やサロンなどに通わされ、状態が悪くなった〉(「サンデー毎日」2017年12月17日号/毎日新聞社)など、不満の声が数多く上がっている。

さらに、総合事業はいま、制度維持の面から見ても崩壊の危機に瀕している。リハビリや生活支援サービスなどはボランティアなどでは賄いきれないため、従来の介護事業者も参入させているのだが、報酬が安いため、事業者の収入は落ち込み、人材確保が困難に。安定したサービスが提供できなくなったり、総合事業から撤退している事業者が続出しているのだ。

実際、総合事業への移行期間が終了した2018年3月末の時点で、「総合事業」のみなし指定を更新しない意向を示した事業所があると回答した市町村が676にものぼることが判明。この数は全体の約4割にあたるものだ。

こうした“失敗”が表面化しているというのに、今度は要支援の人だけでなく、もっと介護必要性の高い要介護1・2の人を、買い物や家事支援などの生活援助サービスも保険給付から外してしまおうというのだ。いや、それどころか財務省は、生活援助サービスだけでなく要介護1・2のデイサービス(通所介護)も総合事業の低報酬介護に移行すべきと主張している。

受け皿の確保もままならないのに、要介護1・2の人までこの「介護保険給付外し」を拡大すればどうなるかは、安定した介護を受けることができない“介護難民”が爆発的に増えることは、火を見るよりあきらか。従来どおりのサービスを受けるにも利用料が払えず、生活の質が著しく悪化することも十分考えられる。

また、介護サービスが安定的に受けられなくなれば、家族が介護に当たることになる。総務省の調査によれば2016年10月から2017年9月までの1年間で「介護・看護を理由に離職」した人は9万9100人にものぼっており、『総介護社会』(小竹雅子・著/岩波新書)によると〈離職したあと無職の人が七割を超え〉〈女性が仕事をあきらめているケースが八割〉だという。

安倍首相は「介護離職ゼロを目指す」「女性活躍社会の実現」などと宣言しているが、やろうとしていることはまるで逆。ようするに、この「介護保険受給外し」は「姥捨て政策」「介護世帯切り捨て政策」にほかならないのだ。

安倍首相が着手しようとしている社会保障改革では、この介護保険制度の改悪とともに、年金制度でも国民に痛みを押し付けようとしている。実際、参院選が終わるまで発表を遅らせた財政検証では、「オプション試算」で会社員らが入る厚生年金の適用対象の拡大や「在職老齢年金制度」の廃止・縮小、受給開始年齢の選択幅を75歳まで拡大したケースなどを提示。試算結果として〈「保険料の拠出期間の延長」といった制度改正や「受給開始時期の繰下げ選択」が年金の給付水準を確保する上でプラスであることを確認〉と結論づけている。つまり、「年金受給は75歳まで我慢しろ」「死ぬまで働け」「あとは自助努力でなんとかしろ」と言っているのである。

しかし、このように、消費増税にくわえて安倍首相が社会保障で国民に大きな負担を押し付けようとし、具体的な内容も出てきているというのに、マスコミはほとんど無視。前述のようにひたすら嫌韓報道を繰り広げている。

そして、安倍政権の意向を忠実に反映したこのメディア報道に踊らされ、国民も嫌韓に夢中になり、そのうち、自分たちの生活を直撃する重大事が勝手に決められてゆく──。いい加減、国民は自分たちが騙されていることに気づくべきではないのか。

(出典 matome.naver.jp)