jiji_suga_yoshihide-1-228x300自民党内では安倍晋三首相が参院選勝利の余勢を駆って「11月の大嘗祭の後に衆院解散、12月総選挙に踏み切る」との見方が強まっている。そうなると、「9月12日」が有力視されている内閣改造と党役員人事では、「11月解散」や「憲法改正」を睨んで大幅な組み替えが行なわれる可能性が高い。

最大の焦点は次の総選挙の司令塔となる幹事長の座。次期幹事長の椅子を争うと見られているのは岸田文雄・政調会長と“影の総理”の菅義偉・官房長官だ。

また、「菅幹事長」が誕生すれば、内閣の要である官房長官の椅子が空く。後任に名乗りを上げそうなのが安倍首相の“お友達筆頭”といわれる下村博文・元文科相と自称「側近ナンバーワン」の萩生田光一・幹事長代行だ。

 内閣改造で注目されるのは、河野太郎・外相。徴用工訴訟で韓国大使に「極めて無礼だ」と詰め寄るなど強硬姿勢をアピールし、留任濃厚に見えるが、「総理は自分より目立つ外相はいらないと考えている」(安倍側近)と“逆効果”のようだ。

 それならば、と悲願の外相ポストをうかがうのが同じ竹下派の茂木敏充・経済再生相と加藤勝信・総務会長。対米貿易交渉で手腕を見せた茂木氏は交渉能力をアピールし、安倍首相と母親同士が親友の加藤氏は“コネ”で「少しでも上のポスト」へと野心を見せる。厚労相候補は注目の小泉進次郎・党厚労部会長だ。政治評論家・有馬晴海氏がいう。

「根本匠・厚労相は答弁能力が疑問視されている。進次郎氏は将来を考えると入閣適齢期で、社会保障がライフワーク。年金改革に取り組まなければならない厚労大臣への大抜擢が考えられます」

 進次郎氏の父・純一郎氏は年金改悪で批判を浴びた。自分に反抗的な進次郎氏に“火中の栗”を拾わせようというのは安倍首相が考えそうな人事ではないか。

女の戦いも激しい。五輪担当相には「恥を知れ」の三原じゅん子氏や橋本聖子氏のほか、参院選で115万票近くを得た丸川珠代氏も再入閣の呼び声が高い。丸川入閣は来年の東京都知事選に小池百合子・都知事の対立候補として出馬させる布石ともいわれる。

 さらに、安倍首相は内閣改造で本格的な「憲法改正」シフトを敷く。

「憲法担当大臣を新設する案が検討されている。その場合、自民党憲法改正推進本部長の下村氏や萩生田氏が候補でしょう」(有馬氏)

 改憲のシンボルとするならいっそ、発信力が強い進次郎氏の「憲法大臣」就任で、内閣の新たな看板とする方がインパクトはあると首相が考える可能性もある。

 それだけではない。参院選では自公と日本維新の会の改憲勢力で3分の2に届かなかった。そこで、人事でも野党切り崩しの“秘策”が練られている。旧民進党から自民党入りした移籍組の長島昭久・元防衛副大臣の防衛相起用構想だ。岩屋毅・現防衛大臣の後任人事として防衛相経験者の小野寺五典氏や下村博文氏、西村康稔・官房副長官の起用もあり得ると政治評論家の有馬晴海氏は言うが、長島氏の起用構想の意図を自民党幹部はこう語る。

「国民民主には、改憲賛成で自民党への鞍替えを望む離党予備群がかなりいるが、冷遇される不安があって踏み切れない。そこで長島氏を大臣にし、『自民党に移れば厚遇される』ことを見せつける」

 国民民主から議員を引き抜き、改憲に必要な3分の2の勢力を確保する作戦だ。欲望丸出しで恥も掻き捨ての猟官ゲームが始まった。

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