架空の街ロスサントスを舞台にした大人気ゲーム「グランド・セフト・オートV(GTAV)」の開発会社が、10年もの間法人税を全く納めていなかったことが、イギリスのシンクタンクTax Watch UKの調査により明らかになりました。

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Report: Gaming the System – Tax Watch UK
https://www.taxwatchuk.org/reports/gaming-the-tax-system/

GTAVは2013年9月にリリースされて以来絶大な人気を集め続けており、2019年3月末時点での累計出荷本数は1億1000万本を記録。これを上回るゲームソフトはあのMinecraftやテトリスぐらいしかないといわれています。

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GTAVの推定総売上は約60億ドル(約6500億円)にものぼり、得られる利益も膨大なものになると見積もられています。GTAVがこれほどの成功を収めていながら、GTAVの開発会社が法人税を1円も納めずに済んでいるのは、イギリスの税制度上に設けられたある優遇策を利用しているためです。

GTAVをリリースしたのはアメリカのニューヨークにあるロックスター・ゲームスですが、制作したのは同社の傘下にあるゲーム開発スタジオロックスター・ノース。そしてロックスター・ノースが拠点を構えるイギリスには、クリエイティブ産業優遇税制という税制度が存在します。

これは、映画・アニメ・テレビ番組といった文化振興を担うクリエイティブ産業を育成することを目的として設計されたもので、英国映画協会(British Film Institute)により「イギリス文化的」と認定されたコンテンツは制作・開発費用の一部または全額が税控除の対象になるというもの。

架空のアメリカの街が舞台でイギリス人の主要登場人物も登場しないGTAVがどのように「イギリス文化的である」と判断されたのかは不明ですが、イギリスの制作会社ということでロックスター・ノースもこの優遇税制を活用しています。そのおかげで、同社は2009年以降10年にもわたり法人税を支払っておらず、さらに2016年から2018の3年間で合計約4200万ポンド(約55億円)の還付金を得ているとのこと。4200万ポンドという金額は、税度が発足してからイギリスのビデオゲーム業界が得た還付金の約2割に相当するとされています。

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大きな利益を得ているにも関わらず、このような優遇を受けることができている理由について、Tax Watch UKは「ロックスター・ノースが親会社に過大な支払いを行うような契約を締結していたのではないか」と推測しています。これによりロックスター・ノースの税制度上の利益は大きく圧縮されるため、ロックスター・ノースは優遇策をフルに活用することが可能になるというわけです。

Tax Watch UKはこうした状況について、「富のほぼ100%がアメリカの親会社と上級管理職に流れており、イギリスのゲーム産業にはほとんど利益をもたらしていない」と指摘した上で、「状況はばかげている」と厳しく非難。イギリスの税制度を担当する歳入税関庁(HMRC)に対し、速やかに調査を行うよう求めています。